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日本の伝統芸能である「能」と、東映が誇る最先端のコンピューターグラフィックスが融合したイマーシブシアターが誕生。
三面スクリーンに囲まれたステージで能楽師が舞い、舞台音楽は邦楽にオーケストラが加わった新しいサウンドを楽しむことができます。
これまでに見たことのない臨場感・立体感のあるエンターテインメントの世界がひろがります。
鎮魂の芸能と言われる能楽の新しい世界。魂の舞をぜひご覧ください。

時は春の初め、所は播州高砂の浦。その浦にある高砂の松の木陰を、共に白髪の老人夫婦が来て掃き清める。都に上る途中この浦に立ち寄った肥後国阿蘇の宮の神主友成は、この夫婦を見て、高砂の松というのはどの木かと尋ね、更に国を隔てた高砂の松と住吉の松とを相生の松という訳や、高砂の松のめでたい謂われなどについて尋ねると、夫婦は、故事などを引いて詳しく答えた後、実は私共がその相生の松の精であると打ち明け、住吉でお待ちしましょうと言って、夕波の寄せる汀にあった小舟に打ち乗って沖の方へ消え失せた。
そこで友成も舟で住吉へ行くと、月下に住吉明神が影向されて神舞を舞い、御代万歳・国土安穏を祝われる。季節は春の初めであって、長閑な気分があり、又常に変わらぬ緑の色を見せ、しかも千年の齢を保つという松を象徴した老人夫婦には夫婦仲の変わる事もなく、共に長寿を保つというめでたさがあり、住吉明神の姿には颯爽たる威厳がある。

吉野の僧が都に上り、一條大宮のある古宮で、庭の梅の花を眺めていると、人の居そうにもない軒端から一人の女が現れ、ここは昔雲の上人が梅花を眺めて詩歌管弦の御遊を催した由緒のある古宮であると教えたので、僧が不審に思って名を訊ねると、実は花に縁の深い胡蝶ですが、梅の花を見ることができないのが悲しく、法華経を読誦して頂いて成仏し、梅の花に縁を結びたいと思い、かように姿を変えて現れたのですと言った。そして再び僧の夢に現れることを約束して消え失せた。そこで僧が梅の花の下で寝ていると、果たして美しい胡蝶の精が現れ、法華経の功力で梅の花に縁を結び得たことを喜び、花に戯れ舞い遊んでいたが、やがて暁の霞に紛れ消え失せるのである。胡蝶が梅の花に憧れるという構想は、珍しさや胡蝶の可憐さを感じさせる効果の他に、気品ある梅の花の情趣を狙ったものと思われる。また胡蝶のいじらしい願望が成仏によって果たされ得るものとした所にも工夫がある。

ある山で、貴婦人らしい女が侍女たちと共に木陰に幕を張り、紅葉狩の酒宴をしていると、従者を連れて鹿狩りに来た平維茂が通りかかる。山中での貴婦人の紅葉狩を不審には思ったが、興を妨げまいという心遣いから、馬を下り、道を変えて、静かに通り過ぎようとすると、貴婦人は維茂を引き留めて酒宴の仲間に誘い入れる。美人の酌に思わず盃を重ねうっとりとして、ついに維茂が酔い臥してしまうと、女たちは、そのよく寝入ったのを見届けて姿を消した。やがて、維茂の夢の中に神の告げがあり、それに驚いて目を覚ますと、今までの女たちは恐ろしい鬼の本体を現して維茂を襲って来た。しかし、維茂は少しも騒がず、八幡大菩薩を念じながら立ち向かい、ついに鬼を打ち平らげるのである。深山の鬼を取り扱った曲は他にもあるが、これはその鬼を勇士が退治する活劇と山中における紅葉狩の描写とを対照させたもので、そこにはまた美人の魅力を強調しながら、しかも「外面如菩薩・内心如夜叉」という仏者の教えを寓している点も窺われる。

監修/二十六世観世宗家 観世 清和

二十六世観世宗家。1959年 二十五世観世左近元正の長男として生まれる。1990年 宗家継承。初世 観阿弥・二世 世阿弥・三世 音阿弥の子孫。
観世流家元として年間80番以上のシテ(主役)を勤め、その数は斯界随一であり、現在の能楽界を代表する。国内はもとより世界各地で公演、中でも2016年7月 ニューヨーク・リンカーンセンターにおける招聘公演(5日間6公演)は連日満員の盛況で批評家から極めて高い評価を得る。2017年には、渋谷区・松濤 「観世能楽堂」を観世家ゆかりの地「銀座」へ移転し約150年振りの帰還を果たした。2019年(令和元年)10月には天皇陛下御即位に伴う「即位礼正殿の儀 内閣総理大臣夫妻主催晩餐会」にて日本国政府代表、来日された各国元首・代表・祝賀使節団へ祝言曲「石橋」を嫡男 三郎太共々披露した。さらに(独)日本芸術文化振興会評議員として日本の伝統芸術の保存と継承に寄与、東京芸術大学音楽学部講師、国立能楽堂三役養成主任講師として後進の育成にあたる。芸術選奨文部大臣新人賞、フランス文化勲章シュバリエ、芸術選奨文部科学大臣賞、伝統芸能ポーラ賞大賞、2015年紫綬褒章、JXTG音楽賞など多数受賞(章)。著書・共著・監修に『観世清和と能を観よう』(岩崎書店)、『新訳 風姿花伝』(PHP)、『能はこんなに面白い』(小学館)などがある。

出演/観世 三郎太

二十六世観世宗家観世清和の嫡男。観世流シテ方能楽師。1999年生まれ。父・二十六世宗家観世清和に師事。
5歳のとき、能「鞍馬天狗」にて初舞台、子方(子役)とし数多くの舞台を勤める。2009年「合浦」にて初シテ(主役)後、「鷺」のシテを勤め、2015年「経正」にて初面(初めて能面を掛けて舞う事)。「石橋」「乱」など勤め現在に至る。次世代を担う能楽師の代表として舞台を勤める。また2016年7月 ニューヨーク・リンカーンセンターにおける招聘公演(5日間6公演)へ父・観世宗家と共に出演し連日満員の盛況で批評家から極めて高い評価を得るなど大成功を収めた。2019年(令和元年)10月には天皇陛下御即位に伴う「即位礼正殿の儀 内閣総理大臣夫妻主催晩餐会」にて日本国政府代表、来日された各国元首・代表・祝賀使節団へ祝言曲「石橋」を披露した。現在、大学生として学業と舞台に励み、海外公演にも積極的に取り組んでいる。

総合演出・出演・地謡/
観世流能楽師 坂口 貴信

1976年福岡生まれ。東京藝術大学邦楽科卒業(安宅賞受賞)。
二十六世観世宗家・観世清和師の内弟子として入門、2010年に独立。正門別会にて、能『道成寺』を披く。他ジャンルとの競演では、3Dメガネで鑑賞する能×3D映像にも携わる。[MUGEN∞能]・[三人の会]同人。坂口松諷会主宰。東京藝術大学非常勤講師。国立劇場養成事業講師。重要無形文化財保持者(総合指定)。

総合監督/深作 健太

父は「仁義なき戦い」シリーズの深作欣二。
映画「バトル・ロワイアル」 脚本・プロデュース
映画「バトル・ロワイアルⅡ 【鎮魂歌】」監督・脚本・プロデュース
現在は映画の枠を飛び越え、演劇やオペラの演出に進出。映像表現と舞台を熟知する日本有数の演出家。

監修/観世清和(二十六世観世宗家)
総合演出・出演/坂口貴信
総合監督/深作健太 
出演/観世三郎太 他

RECORDING CAST

シテ(声の出演)/観世清和 ワキ(声の出演)/森常好 笛/一噌隆之
小鼓/観世新九郎 大鼓/亀井広忠 太鼓/林雄一郎 地謡 /角寛次朗・岡久広・関根知孝

企画:観世文庫 製作:東映 木下グループ
映像制作:ツークン研究所 東映アニメーション
特別協力:観世能楽堂 出演協力:観世流能楽師